敷地は母屋や倉庫など、昔ながらの建物が軒を連ねる大きな宅地の一角に位置し、その一部を解体して2階建ての住宅を建てる計画です。大きな敷地で二面が接道し、敷地内には新築以外の建物もあることから、どこが正面かをあやふやにするため、住宅を囲む塀を円弧状に設置し、方向性がないことを意識して外観を構成しました。施主様は将来的に1階だけで生活できることがご希望だったため、2階は二つの子ども部屋のみとし、水まわりと寝室を含めたその他は1階に配置する全体計画としました。1階部分は2階よりも大きくなる構成を生かして、庭に面するリビングダイニングは天井高さ3.5mの大きな平屋空間、それとつながるスタディスペースは床が一段下がった土間空間とし、一体空間の中でも用途に合わせて天井高さを切り替えることで居心地のいい場所となるように配慮しました。また、テレビ裏に配置したLDKとつながる小上がりの和室は、引き戸を閉めれば存在感を消し、開けておけば小さなお子さまが遊んでいても目が届くように配慮して入口の幅を検討しました。古くからの住宅地の中に、ゆるい半円が映える住まいが完成しました。