神戸市内の高台に区画割された分譲地での計画です。敷地の北側は平坦な開発道路、南側は7mの高低差がある分譲地外周路で、二面が道路に面しています。さらに南側は敷地と道路の高低差によって、山の稜線が望めるほどの眺望に恵まれた立地です。施主様の要望は「自分たちらしいデザインの実現。そして、自分たちを取り巻く家族や仲間が楽しく過ごせる空間」でした。医療従事者であり、法人の管理者でもある施主様は、人や仲間、家族たちとの関係性を重視しながらも自分たちらしい空間とデザインを求められました。そのため、家族や仲間が集まる公共性の高いゾーンと、自分たちだけが使うプライバシー性の高いゾーンを明確に区分し、大きな公共性のある空間と利便性重視のコンパクトな空間を計画しました。敷地北側は間口全幅に建物を配置して2階部分を北側にオーバーハングさせました。そして、車庫とアプローチを2階下部に計画することで重厚感のあるファサードに仕上げました。対照的に南側は景観にあわせて全面開口を計画し、テラスを崖に突き出して屋外空間を配置しました。アプローチと車庫は一体的に計画することで、雨天時と車通勤時の利便性を高めています。車庫には外部収納を設け、アウトドア用品を室内に持ち込まずに済むようにしました。1階は玄関に鎧張りの壁と坪庭を眺める地窓を設け、毎日の出入りを印象的に演出。また、玄関に入り、90度向きを変えるとインパクトのある全開口の光景が広がるという心憎い仕掛けを施しています。玄関周辺にはLDKに向かう動線の他に、ウォークスルー型のシューズインクロゼット、書斎、トイレ、2階へのアクセスができる階段の5WAY動線を確保し、玄関ホールを帰宅時の動作起点としました。LDKは南側に向かって高天井と大開口の大空間を計画し、南側の景色を全力で楽しめるようにしました。さらに屋外にテラスを設け、内外全体の利用を可能とし、多くの仲間や家族が集まっても十分な快適性を確保しました。LDKからも書斎・パントリー・2階へのアクセスがしやすい計画であるため、日常生活は常にLDKと景観を感じながら過ごせます。また、テレワーク業務のあるご主人の書斎は孤立感ないようリビング横に配置しました。2階はコンパクトな計画でありながらも主寝室・子ども室・水まわり・大容量のファミリークロゼットを回遊しながら利用できる計画とし、洗濯作業および起床・就寝時の動作をスムーズに行えるようにしました。玄関とLDKを一体空間としながらもプライバシー性を高め、気配のつながる空間構成となっています。施主様の想いの実現に主軸を起きながらも、これまでの家族と仲間のカタチ、そしてこれからの家族と仲間のカタチを、施主様ならではの視点で大切にし、より良い関係性をカタチづくる「カゾクとカタチの家」が完成しました。
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