建築地は都心に近接した理想的な場所にあり、幹線道路から少し離れた集合住宅と工場に囲まれ、利便性と静けさを兼ね備えた環境です。施主様のご要望は「自分たち夫婦と子どもたち、近郊に住む親族がさかえ、集える場所。そして、多忙な日常から切り離され、都市の中でも自然を享受できる空間」でした。そこで主室を2階に配する計画としました。隣地建物の空隙を利用して採光を取り込める南東側に大開口と、庇を大きく出し、手摺壁を高くすることでプライベート性を高めたバルコニーを配しました。バルコニーを囲むようにリビング、ダイニングキッチン、水まわりを配し、室内にいながらも屋外を感じることができる住空間を実現しました。天井高3.8mの開放感あふれるリビングには、その高さを活かして、囲碁スペースとキッズスペースの重層空間を設けました。キッズスペースやリビングとつながりを感じられる場所に配したダイニングキッチンは、背面の全面収納やパントリーで生活感を排除できるように工夫しています。キッチン奥の洗面室には収納と物干しスペースを用意し、2階で家事が完結するようにしました。1階は玄関、寝室、収納を配置し、バルコニー下部を利用して中庭も設けました。玄関は彫刻を飾る壁面とタイルで装飾を施し、印象的な雰囲気を演出しています。また、玄関ホールから2階主室へと向かう動線と、シューズクロークを兼ねた大容量の収納を経由する動線を設けることで、シチュエーションによって動線の使い分けができるようにしました。多くのこだわりを持ちながらも、父兄家族の意見を柔軟に取り入れながらかたちにされた住まいは、時代とともに変化しながら価値を見出し続けてきた地域性を示すのように、ご家族やご家族とつながりのある人々が集い、さかえ続けるような「かぞくさかえる家」として完成しました。
LIXILメンバーズコンテスト2019/敢闘賞[LIXIL主催]