土地のこと | 2020.10.24 土地購入や建て替えをご検討中の方から「セットバック」(道路後退)についてよくご質問いただきます。セットバックとは、4m未満の道路に接している敷地に建つ既存建物を解体し、新たに建築する際に、道路の中心線から2m後退した場所を道路境界線とし、それより奥に建物を建てなければいけませんという決まりです。セットバックができた理由「建物を建築する際は、セットバックして道路幅員を4m以上にしてください」という法律はいつ制定されたのでしょうか。答えは、1950年(昭和25年)11月23日の建築基準法の施行日です。しかし、厳密に言うと建物を建築する敷地に接している道路を4mまで広げることが義務化されているわけではありません。このセットバックについて示されている建築基準法第42条は道路に関して定めている条項です。こちらを分かりやすく読み解くと「『道路に接している敷地でなければ、建物を建築してはいけません』と建築基準法で定められていますが、そもそも何をもって道路と定義するか決めましょう」という内容が示されています。そして、建築基準法上、「4m以上の幅の道」を道路と定義されました。そのため、「自宅前の道は幅4mもないけど今後建て替えることはできないの?」と言った疑問が出てきます。日本では4m未満の道は非常に多く存在します。そこで4m未満の道に対する取り決めができ、「4m未満の場合でも道路と見なすが、将来、幅員4mの道路を確保できるように、建て替える場合は道路の中心線から2m後退した位置を敷地の境界線と定めて建築すること」に決まりました。これが「2項道路」(にこうどうろ)というものです。2項という名前の由来は建築基準法の第42条第2項に記載されているため、そう呼ばれています。セットバックの意義とメリット「自宅前だけをセットバックして道幅が広くなっても、周囲の家はセットバックしていないため道幅は広がらないし、前面道路への入り口は狭いままで、車は駐車し辛い。こういう状況でもセットバックする意味はあるのか疑問。土地が小さくなる分、損した気持ちになる」と思われる方も多いかと思います。■救急車両が入れるセットバックの最も大きな目的は、救急車両が入れる道路ができるということです。車が進入できないところで、もし火事が起きたら、急患がいるのに救急車がたどり着けない、このような危険を回避するためにも道路を少しずつ広げることはとても意義があることだと言えるでしょう。■延焼の防止火事が起きた場合、道路が狭いと向かいの家にも延焼して大きな火災になってしまう危険があります。さらに類焼しているのにも関わらず、消防車もたどり着けないとなると、大災害になってしまう危険があります。■治安、景観の改善道幅が狭いと、道路が暗くなります。そのため、治安的にもあまり良くない環境になる恐れがあります。また、道路が拡幅されて広くなることで景観も改善され、良好な日当たりを期待できます。■道路後退部分は固定資産税が発生しない新築を建てる際、セットバック部分には建物は建てることができませんし、建築面積(建蔽率や容積率)にも算入できません。それでも自分の土地として持ち続ける以上、固定資産税だけが掛かることになります。そのため、道路として提供するのですから、税金が発生しないように手続きをした方がメリットがあると言えます。セットバック後、何の手続きをしなくても固定資産税が減免されるとは限りません。役所等への申請など、個別での手続きが必要となりますのでご注意ください。セットバックと駐車の関係セットバックした場合でも、道路整備が完成するまでは、既得権として当該部分を使用することができます。例えば、両隣の2軒がセットバックを完了していない場合は、両隣も建て替えて幅員4mの道路が完成するまで、自分の土地として使うことができます。建築物は、道路を確保することを前提に計画しているため、完成するまでの間は駐車スペースなどとして活用するのも良いかと思います。セットバックは、実に意義深いことだと言えます。前向きに捉えて土地選びの許容範囲を広げてはいかがでしょうか。